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昨年12月、解体された弥生小学校の屋内体育場跡に立ち、今正に消えようとしている東坂側第二昇降口を眺めた。 そこには丸柱と曲線ハンチで繋がる梁が昇降口詳細図面に描かれた通りの姿を露にしていた。 生きたまま粉砕され引き千切られた鉄筋コンクリート造の構造体からは劣化などどこにも感じさせない、竣工当時のままの力を感じた。 それはまるで古い木を削った時に中から新しい木の香りが蘇ってくる、あの感覚に似ていた。 前稿で解体が始まった校舎を取り上げ、そのまま6ヶ月間休稿した。 このまま書き進むことが本来の趣旨から外れそうに思えたからだ。 拙稿を閉じる時が来たのかとも考えた。 解体の経過を取り上げそれを伝えることが拙稿の次に課せられた使命なのだろうかと自問自答もした。 小出しに発注される解体工事からその解体総費用と新築費用の総体を見詰め、そこに隠れている様々な矛盾の指摘を書き連ねることも考えた。 地元の人のブログに上がる記事や写真に心が痛んだ。 この建物の背景が分かれば分かるほど決して思いつきや過大評価ではなく、心からこの建物には重要文化財として後世に残す価値があり、そうできると確信もしていた。 その建物が惨たらしく壊されていく様に行き場のない怒りを覚えた。 さて、二十間坂の上に出現した「自由の女神像もどき」騒動の顛末を見て思った。 それは弥生小学校校舎解体問題と根っ子を同じくする函館西部地区の歴史的景観を巡る問題だったが、この問題に結論が出された。 函館市は自己の責任を又もや有耶無耶にし、当事者のマルキタ北村水産に対し「二十間坂の自由の女神像もどき」が市都市景観条例違反に当るとして撤去するよう是正指導を行った。 しかし、もっと質が悪いと感じたのは、景観審議会が全く函館の歴史的景観や歴史的建造物へのサステナブルな方向性を理解していないということが改めて露呈したことだった。 昨年12月の話に戻るが、解体された屋内体育場跡からスロープを下の校庭に降りると、その壁面は子供たちが描いた絵で埋め尽くされていた。 だが、そのスロープは無残に二つに寸断され、その間に解体車両が校庭に下りる為の仮設スロープが造られている写真を見た時は全身から血の気が引いた。 橋を望み、道路を望み、新幹線を望む、望み通りにそれらが出来て数年が立つと、便利さと引き換えに失ったものの多さに初めて気が付く。 このどうしようもない行政と企業と住民による悪循環を嫌と言うほど見てきた。 函館は新幹線の開業とともにもっと酷くなる。 景観を破壊するホテルの建設もこの「二十間坂の自由の女神像もどき」も、そのプロローグに過ぎないことを景観論議と共に考えるべきだろう。
by yayoizaka
| 2010-07-04 16:54
| 23.弥生小学校を考える
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