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<Category19-038 / 2008.6.18> 今回は復興小学校の耐震性はどうなのかを見ておこうと思う。 今回の記事は、文部科学省の委託調査研究として日本建築学会文教施設委員会が作成した「既存学校施設の有効活用に関する調査研究報告書」に基づいて作成したものである。 先ず、その報告書には復興小学校に関して次のことが書かれている。 ●1 建設された時代における最良の材料を使用している。 ●2 最新の建築技術で施工されている。 ●3 高尚な意匠設計に裏打ちされている。 ●4 非常に珍しい特別な構法を用いている。 ●5 デザインにおいても構法が持つ特性を応用し、曲線を用いたレリーフや抽象的な形態を採用している。 ●6 丈夫に、丁寧に建設された。 ●7 諸外国の先進的な事例を参考に建設された。 このたび私が取り上げた8校の復興小学校の内、3校についての記載がこの報告書にあった。 以下は、この報告書から今回のテーマである耐震性に関する部分を中心に抜粋して説明を進めたい。 ●CASE 1 中央区立泰明小学校 [設立年] 明治11年 [完成年] 昭和4年(1929年) [敷地面積] 4,035㎡ [保有面積] 4,238㎡ [学級数] 12学級(平成20.4.7) [児童数] 359名(平成20.4.7) 1997年(平成9年)に講堂と体育館の耐震工事を行っているが、その他の耐震補強等は行われていない。(勿論、東京都による耐震診断を行った上で、耐震補強が必要ないとしたことは言うまでもない) 次に、同報告書にあった問題点と対応方法を書き添えておく。 『 施設の問題点としては、キャパシティの問題が一番大きく、教室の大きさ・数、洗面・トイレの数も決して十分とはいえない。 専用の会議室もなく、ランチルームや総合学習室を代用している。 このように問題点は少なくないが、建物は地域の誇りであり、建替えの話が出ることはまったくないという。 教職員も、伝統あるこの学校の歴史に誇りを持ち、それらのよい点を地域学習の中で積極的に子供たちに教え、施設の不備な点は教育方法や施設の運用面での工夫でカバーしている。 教育のあり方や中味の重要性を大前提とし、それに対して可能な限りの施設対応を図っている。 』 ●CASE 2 中央区立常盤小学校 [設立年] 明治5年 [完成年] 昭和4年(1929年) [敷地面積] 4,124㎡ [保有面積] 3,244㎡ [学級数] 6学級(平成20.4.7) [児童数] 142名(平成20.4.7) 耐力診断の結果、構造上の問題はないが、老朽化による給排水設備や仕上げのトラブルは頻繁で、小規模な改修は毎年学校に配当される費用で賄い、大規模な改修については区に要望を行っていると明記されている。 複合施設として100億円をかけて建設された区内の他の小学校を歴任された校長先生の言葉が、次のように書かれていたので紹介しておく。 『 その最新設備を持つ校舎と、常盤小学校の歴史ある校舎の、どちらも評価できるとした上で、常盤小学校の校舎は落ち着いた雰囲気があり、児童の情操面にいい影響があると思える。 』 ●CASE 3 港区立高輪台小学校 [設立年] 明治41年 [完成年] 昭和10年(1935年) [敷地面積] 6,291㎡ [保有面積] 5,223㎡ [学級数] 14学級(平成19年度) [児童数] 407名(平成19年度) 1996年(平成8年)に耐震診断を実施し、施設の安全性が問われ新築案も浮上したが、1997年(平成9年)に東京都歴史的建造物の指定を受け、地域からも保存の声が上がり、1999年(平成11年)に校舎の継続使用に向けた大規模改修が決定された。 そして、2003年(平成15年)から2005年(平成17年)にかけて工事が行われた。 総工費は約30億円で、新築の場合の約半分でおさまったとある。 ( 体育館を地下化したことでコストがかかっている上での話であることを付け加えておく ) 耐震補強の際に一般的に行われるブレースの取り付けや壁厚の変更等は、地域からの外観維持の要望を受けて取り止め、制震構造を適用することで対応している。 同じ復興小学校でありながら、泰明小学校と常盤小学校は耐震補強が必要なく、高輪台小学校では耐震補強が必要だったのは、その建築スタイルの違いが大きく影響していると私は推測している。 即ち、前者が表現主義スタイルであるのに対して、後者はインターナショナルスタイルという違いがある。 インターナショナルスタイルに比べると表現主義スタイルは壁面積が多く、開口も小さく、柱も太いと推測できる。 一方、機能主義、合理主義を理念とするインターナショナルスタイルは 、装飾性を排除して、柱や梁の規則性を造形的特徴としていることから、壁面積が少なく、柱も細いと推測できる。 このようなスタイルの違いが、最初に書いたように、最良の材料を使い、最新の建築技術で施工し、高尚な意匠設計の裏打ちというグレードの共通性を持ちながら、耐震補強の要否の違いとなって現れたと思う。 もう少し詳しく説明すると、泰明小学校と常盤小学校は1929年(昭和4年)、高輪台小学校は1935年(昭和10年)に完成している。 インターナショナルスタイルが1932年にニューヨーク近代美術館で開催された 「モダンアーキテクチャー」 展以降広く宣伝されることとなった時期が、ちょうど高輪台小学校の設計時期と重なり、この最先端のモダンスタイルを採用したことが、皮肉にも耐震性の上では、この学校より古い他の2校に劣る結果になったということである。 <次回も、温故知新をつづけます>
by yayoizaka
| 2008-06-18 00:07
| 19. 四方雑話
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